現代社会は待つことを嫌う

とうとうプロパンガスを解約した。
東京に住んでいた頃の都市ガスが、一立米あたり140円だったのに対し、今のアパートのプロパンガスは一立米あたり560円と実に四倍もするからだ。

風呂はガスから電気で沸かすようにした。本当は灯油か薪で沸かすようにしたかったのだけれど、設備にかけられるコストなどの関係から電気にした。
ものの数十秒でお湯が出るガスとちがって沸かしはじめてから一時間くらい経たないとお湯がでない。
その間は、ただ待つだけだ。

調理は電子レンジや炊飯器、電気ケトルといった電気で動く調理具があるのでさほど困らないが、炒め物や焼き物など、どうしても火を使いたい時はカセットコンロと、七輪を使う。

七輪の燃料には、バーベキューでお馴染みの安価なマングローブ炭を使っている。
バーベキューグリルは、グリル自体に熱が蓄積されず、炭を燃やして出る炎で調理するので、マングローブ炭を使うと、はぜて火の粉が舞うし、目に染みる臭い煙が食材についてしまう。
そんな炭でも七輪で使うと、とてもよいパフォーマンスをしてくれる。

七輪の珪藻土が熱を蓄積し、その輻射熱によって七輪内部が高温に保たれ、煙の原因である化学物質を熱分解してくれるので、煙も臭いもほとんど出なくなる。

七輪の調理のコツをつかむまでは、焼き物の中心に火が通らず、しかも煙まで発生して目が痛くなったりしたけれど、コツをつかんでからはそういうこともなくなった。
コツと言うのは単純で、七輪の中で火をおこしてから、七輪が熱くなるまで、ただ待ち続けるだけだ。
それだけで焼き物がとても美味しくできるようになった。
それに気づいたとき、それと同時にガス供給システムは、現代社会の価値観をそのまま反映していることに気づいた。

スイッチひとつで10秒後にはお湯が作られ、スイッチをひねれば即座に火がついてフライパンが暖まる。
そこに待つという行為は存在しないに等しい。
現代社会は待つことを極端に嫌っているようだ。

農業をしていると、自然の中で働くとことの極意は、こちらから積極的に働きかける作為以上に、ただ何もせずに待つことの方におかれるのではないかと思う。
春が近くなり落ち着かないからといって作物の種を蒔いても、結局は気温が上がらないと芽は出ない。いくら焦ったところで、時期が来ないと収穫することはできない。
物の真価を引き出すには、待つことより大事なことはないように思う。

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“現代社会は待つことを嫌う” への 2 件のフィードバック

  1. 興味深く読ませて頂きました。

    現代社会は待つことを嫌う。確かにその通りですね。

    私は毎朝、電車で首都圏に通勤していますが、1本でも速い電車に乗ろうとあくせくしていますし、エレベーターに乗り込んだ後は、1秒でも速く扉を閉めようとボタンをプッシュしています。

    また、会社組織の中に身を置いていると、労働時間に適当な比例係数を掛けた対価をもらう代わりに、『限られた時間内に何らかの成果を残しなさい』と要請されることもしばしばです。

    会社組織は、『時は金なり』という諺を曲解して、『時間をかけるからには金を生み出さないといけない』と常に焦っています。だから、かえって今は何もしない方が良い結果に繋がるという可能性に思い至りません。

    政治家や行政官も、受験生やスポーツ選手だってそうです。資本主義社会の構成員は、泳ぐことを止めたら死んでしまうマグロと同じ(だと思い込んでいる人々)なのです。

    とみやまさんの記事を読んで、その豊かな時間の使い方に、とても羨ましい気持ちになりました。

    とみやまさんの結びの言葉を借りれば、『時は金なり』という諺は、『時間をかけること(待つこと)は、物事の真価を引き出す最も簡単な方法である』と解すべきなのかもしれませんね。

    まとまりのないコメントですみません。今夜は、あみんの『待つわ』を聴きながら眠ることにします。

    1. さいしゅさんコメントありがとうございます!

      興味のないことで結果を出せっていわれると辛いですよね!

      やりたいことだけをやっていこうと思ってます!

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