移住者はなぜニット帽をかぶるのか?

以前から疑問に思っていたものの、放置していた問題の一つに、「移住者はなぜニット帽をかぶるのか?」という問いがありました。

こういう重要な疑問に対して、まあそういうものだからというふうに曖昧にして納得をしてしまうことを、世間では「大人になる」と言います。
とはいえ、問題は未解決なので、消え去ることなく、抑圧されたまま残ることになります。

実際にニット帽をかぶっている移住者に、なぜかぶっているのかと聴ければよかったのですが、なにぶん頭部に関する質問なので非常に失礼な質問に受け取られかねず、ついつい慎重になりすぎて聴けずじまいになりズルズルと2019年まで来ましたが、自分で山の中に移住してみて、不意にその答えがわかりました。

もったいぶるわけではありませんが、解答を示す前に、まず山の中での暮らしの特殊性を説明する必要があります。

前提条件を共有せずに解答だけを知ってしまうと、なまじ理解できるだけに早合点してしまい、正解に近付くことがないばかりか、答えを得たと思いこむことでそれ以上の探究を辞めてしまう分、全く無知の時よりもなお悪い状況に自分を置くことになります。
ソクラテスや、親鸞もその点に対して警鐘を鳴らしていましたよね。

さて、山の中での暮らしの特殊性ですが、まず第一に挙げられるのが、非常に静かという点です。人が少なく家と家との距離も広いので、人間活動に起因する音はまず聞こえませんし、冬は虫も鳥も静かです。とくに雪が降った夜は、雪が吸音材として機能するのか、もうまったくの無音になります(ただし米軍機は除く)。
次に、気温が低い点が挙げられます。夏は涼しく、冬もかなり涼しいのが山です。家が断熱材を使用した気密性の高い住宅なら、そんなに寒くないかもしれませんが、古民家の場合、暖房を使用していないと室温が普通に氷点下になります。

そういった環境下で何が起こるかと言うと、そうです、耳鳴りです。

先月に大雪が降った日あたりは非常に寒かったのですが、そのとき布団に入って寝ようとすると、いままでにないゴーっという耳鳴りがしていることに気がつきました。
音自体は全然大きくないのですが気になって眠れず、ネットで対策を調べると音楽や空気清浄機のモーター音でごまかすとよいとあったので、youtubeで音楽を流してごまかしていました。

ある日、耳を冷やすと耳鳴りの原因になると記載されたサイトを見つけました。これは、暖房のきいた部屋では耳鳴りが起こらず、寒い寝室で耳鳴りが起こることと符合していたため、さっそくニット帽を耳までかぶったところ、耳鳴りがしなくなりました。

このとき私は、移住者がニット帽をかぶっている理由を完全に理解したわけです。
ニット帽は、耳を暖めることで耳鳴りがすることを防止していたのです。帽子だけに。

今度時間ができたら、耳鳴り防止帽子とその使用方法として特許出願したいと思います。