大内正伸氏講演会「里山の楽しみ」

2月9日 雨

本日は、まんのう公園で、さぬき森の会!が主催する講演会がありました。

講師は、高松市在住の大内正伸さんでした。
私も大内さんの本は何冊か持っていて、それが群馬の話だったので、てっきり群馬に住まわれているものと思っていたら、震災後は高松市に移住されていたということで、驚きました。

講演内容は、自己紹介から始まり、背負子(しょいこ、一番上の写真のやつです)を作った話、囲炉裏、養蜂、高校生と石積み擁壁を再生する話、住宅街の真ん中で自然農法を実践する話、鳥獣害の話など、多岐にわたる内容でした。

今後の活動の示唆に富んでいて個人的に新しいと思った話を二点ほど紹介したいと思います。

まず、一点目は、枯れ枝暖房を利用した里山整備です。
大内さんは、自宅に囲炉裏を作られて、その燃料として建築廃材や薪を利用されていたそうですが、最近は枯れ枝を利用しているそうです。
山に入れば、枯れ枝はいくらでも落ちていて、しかも踏むだけで簡単に折れるので、チェーンソーが不要になるし、薪割の必要がないのが良いとのことでした。
そして、人が山に入って、枯れ枝を片づけることで、整備されるという発想です。
いまだに大きな事故の絶えないチェーンソーによる間伐を行わずとも、燃料供給機能としての山があるというのが新鮮でした。

私の意見としては、枯れ枝を片づけるだけで整備されるというよりも、燃料の採取であるため、季節を問わず定期的に山に入る必要があり、ついでに下草を刈ったり、ツル植物を切ったりすることで、山を手入れしていくという感じでしょうか。
国策エネルギー企業から燃料を購入しなければならない時代に、冬場の暖房や風呂のガス代が全くかからないのは魅力的です。
一人だけの取り組みではなく、こういう取り組みが地域全体に広まれば、山もきれいになって、化石燃料も節約できて一石二鳥だとおもいました。

二点目は、養蜂に関してです。
スムシという虫がいて、日本ミツバチ、西洋ミツバチの巣をとわず、ハチの巣を食べてしまうので、ミツバチの群れを壊滅させる要因になります。どの本を読んでも、このスムシはミツバチや養蜂家の経済にダメージを与える天敵とか害虫というレッテルを貼られています。
私自身、この春から養蜂をやろうかと思っていて、スムシ=害虫と思っていましたが、大内さん(あるいは大内さんの養蜂の師匠)は、このスムシを掃除屋と呼んでいるところに感銘を受けました。
ハチが木の洞に作ったまま捨てられたハチの巣などをスムシが片づけて更地に戻すことで、再び別の群れが新しく営巣できるようになるとのこと。

ここからは私の意見ですが、結局、害虫かどうかは、人間が決めることであって、ハチや人間といった個を離れて、自然という大きな枠組みの中からみれば、スムシというのはハチの数を制御する調整役であり、古い巣を破壊して新しい巣を作るインフラの役割も持っているという事実に気づかされました。人間の社会でも朽ちていく空き家が残されて問題になっていますが、ハチ社会ではそういう問題は起こらないわけです。
もちろんスムシ自体はミツバチに依存していて本能のままに生きているだけなのですが、個々の虫がただ生きているだけで、バランスを取りながら全体として持続的に生きられる仕組みを作り上げているところに、心の欲するところに従いながら矩を超えない自然の精妙さを感じられます。

自然の力が強いアジア地域に生きる人たちは、こういう大きな枠組みとしての自然を神と考え、人間もその自然の中に組み込まれたものと考えていたのもなんとなくわかる気がします。

西洋では、人間の理性が最高善なので、自然は人間の理性の下に管理・保護されるものとなり、人間の理性に従うミツバチは良いもの、人間の理性に従わないスムシは害虫というレッテルを貼り続けるわけですが、自分の中にもいつの間にかそういう思想がぬきがたく存在しているのを反省すべきだと思いました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。